甘い魔法―先生とあたしの恋―
他の3つの机とは比べられないくらいに整頓されている机に、思わず笑みが零れる。
そんな机に少しだけ興味が湧いて……プリントを机に置いてから、矢野の椅子に座る。
そして引出しに手をかけて。
――ガチン。
鍵が掛かっている引出しに、あたしは大きなため息をついた。
「どれだけきれいにしてるのか見てみたかったのにー……」
がっかりしながら椅子の背もたれに身体を預けて、天井を見上げると……後ろの窓から穏やかな太陽の光が差し込んできて、暖かい光に目を細めた。
『答えが明確』
目の前の出席簿に、いつかの矢野の言葉がふと頭に浮かぶ。
答えが、明確……ね。
……そうかな。あやふやな方がいい事だってあるよね?
……違うか。
あたしが現実を受け止められないから、そんな風にはぐらかしたくなるだけなのかな……。
小さなため息が、誰もいない部屋に消えて行った。