甘い魔法―先生とあたしの恋―
to.啓太
sub.
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もう別れよう。
ばいばい。
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送信メールの確認画面で、あたしの手は止まっていた。
後は送信を押すだけなのに……なかなか気持ちの整理がつかない。
とっくに整理したハズの気持ちが、また散らかり出す。
『嘘つかれても何されても信じようとするのは……』
さっきは返せなかった矢野の言葉に、あたしは表情を歪ませた。
嘘なんて……あたしだって嫌い。
嫌い、だけど……信じてたかったんだもん。
優しい啓太を信じていたかった。
支えてくれた啓太を、信じたかった。
……でも、もうその啓太がいないなら。
待ってても戻ってこないなら……信じてる意味なんか、ない。
大体、初めから信じてた訳じゃないんだ。
ただ、現実から目を逸らして見ない振りしてただけ。
逃げてただけ……。
すごくなんかない。
認める事もできないくらいに、弱かっただけ―――……
それでもなかなか踏み出せない一歩に、小さく息を吐いて天井を仰ぐ。
そしてもう一度手元に視線を落とそうとして、テーブルの上に転がる飴に気付いた。
先週矢野からたくさんもらった飴。
「……」
その飴を一つ手にとって、口に入れる。
口の中に広がる甘い風味に気持ちを落ち着かせてから……再びケータイを見つめた。
あたしが好きだったのは昔の啓太で、今の啓太を好きな訳じゃない。
殴られて、冷たくされて、つらいだけなら―――……。