甘い魔法―先生とあたしの恋―


ゆっくりと目を閉じて、送信ボタンを押した。


『送信しました』

画面に機械的な文字が並んだのを確認して、気が抜けたように無気力感に襲われて。

でも次の瞬間には胸が苦しくなって、目の奥が熱を帯びた。


啓太にメールを送る事なんてほとんどなかった。

一度送った時文句を言われてからは送らないようにしてたし、啓太からだって届かない。

用件は全部電話で、電話だって月に数回で……、会えば暴力を振るわれて。


別れた事は誰が見たって、自分でさえ正しい選択だと思うのに。

なのになんで涙がでるんだろ。


自分が情けないから?

彼氏がいなくなるから?

……優しい啓太がいなくなったのを認めたくないから?



涙が唇の脇から口の中に入り込んで、甘さと混ざり合って消えていく。

静かに流れる涙をそのままに、テーブルの上の飴を眺めていた。


この飴を全部舐め終わる頃には……悲しくなくなるかな。

また、笑えるのかな……。


だって……『痛み止め』なんだから。

心の痛いを奪い取ってくれるんだよね?


すぐじゃなくていいから……

だから、全部、全部……キレイに消して―――……



思い出しても悲しくならないように。

あたしが間違って振り返らないように。



ありがとう、とは言えないけど……。



ばいばい、啓太―――……






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