甘い魔法―先生とあたしの恋―
気持ちが落ち着いてから諒子に報告すると、飛び上がるほど喜ばれた。
そんな諒子を見たら、自分のした事がどれほど正しい事か分かった。
……でも、和馬と矢野には言えずにいた。
和馬には、色々聞かれそうで面倒だったから言わなかっただけだけど……。
矢野は……なかなかタイミングが難しくて。
……ううん。
本当はタイミングなんていくらでもあったんだけど……言えなかったんだ。
『別れた事を知ったら、矢野はあたしを気にかけなくなるのかな……』
そんな考えが頭を過ぎって、言えなかった。
別に気に掛けて欲しい訳じゃない。
特別に優しくして欲しい訳じゃない。
なのに、ふとそんな事を考えちゃって……そのまま言えずにいた。
「実姫、話ってなんだよ」
昼休みにメールを送ると、隣のクラスの和馬が、あたしの席まで押し掛けてきた。
そんな和馬に、諒子と顔を合わせて笑う。
「今日の帰り、うち寄らない? ……その時話すから」
納得いかなそうな顔をした和馬が渋々頷く。
少し先が思いやられながら、あたしも苦笑いを浮かべた。
啓太から、メールの返事はこなかった。