甘い魔法―先生とあたしの恋―


気持ちが落ち着いてから諒子に報告すると、飛び上がるほど喜ばれた。

そんな諒子を見たら、自分のした事がどれほど正しい事か分かった。


……でも、和馬と矢野には言えずにいた。

和馬には、色々聞かれそうで面倒だったから言わなかっただけだけど……。


矢野は……なかなかタイミングが難しくて。

……ううん。

本当はタイミングなんていくらでもあったんだけど……言えなかったんだ。


『別れた事を知ったら、矢野はあたしを気にかけなくなるのかな……』

そんな考えが頭を過ぎって、言えなかった。


別に気に掛けて欲しい訳じゃない。

特別に優しくして欲しい訳じゃない。


なのに、ふとそんな事を考えちゃって……そのまま言えずにいた。





「実姫、話ってなんだよ」


昼休みにメールを送ると、隣のクラスの和馬が、あたしの席まで押し掛けてきた。

そんな和馬に、諒子と顔を合わせて笑う。


「今日の帰り、うち寄らない? ……その時話すから」


納得いかなそうな顔をした和馬が渋々頷く。

少し先が思いやられながら、あたしも苦笑いを浮かべた。



啓太から、メールの返事はこなかった。






< 118 / 455 >

この作品をシェア

pagetop