甘い魔法―先生とあたしの恋―
だけど、ぼーっと眺めている先に、見覚えのある茶髪頭が紛れ込んできて……。
――ピシャ!!
慌てて窓を閉めた。
「あれ? どうしたの?」
「や……、やっぱり煩いし……」
諒子に言い訳をしながら、頭をかがめる。
……廊下を通る矢野に見つかりたくなくて。
「だからどうしたのって。……なに、そこ格好」
「や……、なんとなく」
昨日抱きとめられた感覚が
矢野の腕の感触が……まだ、消えてなかった。
寝たハズなのに、あたしの身体はしっかりと鮮明にそれを記憶していて。
身体がむず痒いような熱いような、変な感じで……。
今朝は、矢野を避けて早めに登校した。
壁越しの廊下を矢野が通ってると思うと、胸がドキドキしてきて……。
そんな心臓の状態に気付いたあたしは、首をぶんぶんと振る。
っていうか先生だからっ!
あたし生徒だしっ
好き、とかそんなんじゃないし!!
……大体、啓太と別れたばかりなのに、こんなにすぐ他の人を好きになる訳ないじゃん。
あんなに……
あんなに悩んで別れたのに、こんなに早く次の恋ができる訳ない。
……それに。
矢野には彼女がいる。
だからありえない。
……っていうか、それ以前に普通にありえない。
これは……
このドキドキは、恋とは違う――――……っ。