甘い魔法―先生とあたしの恋―
今、やっと自分の気持ちを認めた。
……認めざるを得なかった。
あたしは、矢野の言葉に明らかにショックを受けていて。
そんな自分を、痛いくらいに実感してしまって。
……もう、どんな言い訳をしても誤魔化せなかった。
でも……でも、まだ気付いたばっかだし。
まだ、きっとどうにでもなるくらいの気持ちだし……。
だって……、やっぱり教師だし。
あたし、生徒だし。
生徒、だし……。
当たり前の事なのに。
当たり前過ぎる事なのに……なぜだかキュっと苦しくなった胸に、表情を歪めた時。
背後から声を掛けられた。
「こら」
声と同時に走った、頭への軽い衝撃。
振り向くと、教本をあたしの頭に乗っけたままの矢野の姿があって……。
「なに覗いてんだよ」
「え、あ……ごめん、なさい」
急に向けられた視線に戸惑って咄嗟に謝ると、矢野があたしの顔を覗き込む。
「な、に……?」
「やっぱりなんかおかしいよな……。おまえ、なんかあっただろ」
至近距離に飛び込んできた矢野の顔に、勢いよく首を横に振る。
そして、平然を装って口を開く。
「モテるんだね……分かってたけど」
「別に……。みんなそんな本気じゃねぇよ。
生徒にモテても仕方ねぇし」
矢野が笑いながら言った言葉。
気付いたばかりの恋心が、胸の奥でズクンと鈍く痛んだのが分かった。
鈍く、でも確かに痛む心……。