甘い魔法―先生とあたしの恋―
寮に入れるのにはさすがに抵抗があって、近くのコンビニを待ち合わせ場所に指定した。
あたしの指定した待ち合わせ場所での待ち合わせなんて……初めてだった。
いつか鉢合わせしたコンビニで、啓太を待つ。
あの時の事を思い出しても、胸は痛まなかった。
付き合ってる間は気付かなかったけど……。
啓太との関係に疑問を持っている間に、だんだんと矢野が、……先生が、入り込んできていて……。
ゼリーとか飴をもらった時も
抱き締められた時も
笑い掛けられた時も……。
矢野の、先生の優しさを、心地よく感じてた。
先生の隣が……心地よかった。
そんな事に、なんで今更気付くんだろう。
自分でも知らない間に好きになってたなんて……。
気付いたら、もうこんなに好きなんて……
そんなの―――……
「実姫」
名前を呼ばれて顔を上げると、いつの間にか啓太の姿があって。
あたしは気まずさから目を逸らす。
目の前の啓太を、ついこの間まで好きだったハズなのに。
2人で会ってる事に違和感すら覚えた。
「おまえ、アレ本気?」
「……」
啓太の言葉に、あたしはコクンと頷く。
「へぇ……好きな男でも出来た訳?」
「……」
さすがに頷くには抵抗があった。
それは、啓太に悪いとかそんなんじゃなくて……ただ、自分の気持ちを認めて第三者に伝える事に、戸惑っただけ。
先生への想いを言葉にする事を、ためらっただけ―――……。
コンビニにはお客さんは誰もいなくて、いつもあたしをだるそうに迎え入れるバイトが暇そうにしていた。
6月になって一気に延びた日。
それでも、20時を過ぎると外は暗闇に包まれていた。