甘い魔法―先生とあたしの恋―
『15分後から全校集会を開始します。
生徒は時間までに体育館に集合し、整列するように』
廊下のスピーカーからの放送が、トイレに響く。
その放送に、諒子は顔をしかめて、思い当たった考えに口を開いた。
「全校集会……あっ! そっか!
アレだ。ほら、バスケ部がなんかの大会で優勝したとかなんとか……」
「あー……そういえば昨日の帰りのHRで言ってたっけ。今日は椅子ないよね……」
教頭の長い話を椅子もなしに立ちっぱなしで聞くのは結構つらい。
これからその試練が待っているのかと思うと……無意識にため息が落ちる。
そのため息が諒子と重なって、顔を合わせて笑った。
「あんまり早く行っても和馬くんとの遭遇率が高いかもね」
「うん。……ゆっくり行こ」
そんな会話を交わしてから、言葉通りゆっくりと体育館に着いた頃には、もうほとんどの生徒が集まっていた。
生徒の間をすり抜けて、自分達の出席番号の位置まで向かう。
「矢野センの茶髪、他の先生と並ぶと目立つね」
やっと整列した時、諒子が後ろから話し掛けて来た。
その言葉に、あたしも視線を先生へと移す。
他の教師よりも頭が少し飛び出ているせいで、茶髪が目立つ。
そのせいで見つけやすい。
……見つけたくもないのに、すぐに視界に入ってくるし。