甘い魔法―先生とあたしの恋―
腕を組んで片足に体重をかける先生の姿に、あたしは身体を小さく縮こませる。
そして、気付かれないように、じっとその姿を瞳に映す。
クールそうに見えて、本当は柔らかい表情。
寝起きの少しだけ子供っぽい言葉遣い。
子供みたいな無邪気な笑顔。
力強い、腕。
男らしい、真剣な顔。
優しさの詰まった言葉―――……。
全部……
全部、独り占めしたい。
あたしだけのものに、したい――――……
ふと、そんな考えが頭に浮かんでしまって……必死にかき消そうと頭を振る。
やばい……。
やばいって、あたしの頭……っていうか、思考……。
相当、やばい……。
「なに? 胸キュン中?」
「っ!!」
諒子が楽しそうに話しかけてきて、あたしが言い返そうとした時。
『えー……これより全校集会を始めます』
教頭の挨拶が始まって、あたしは渋々前を向いた。
長い長い集会の途中、何度か先生をこっそりと覗き見た。
生徒みたいにあくびをする先生は、スーツを着た学生みたいに見えて少しだけおかしい。