甘い魔法―先生とあたしの恋―
「!?」
騒ぐ生徒の中、先生があたしの腕を掴んでた。
強く引かれる腕に、あたしは先生に連れ出される形で、列から飛び出す。
「貧血起こしてるんで、保健室連れて行きます」
先生は、途中、他の先生にそう告げて……でも、足を緩める事なく進む。
先生に腕を掴まれたまま体育館を出て、中校舎の階段を3階まで上がる。
その間、先生は何も話さなくて……。
掴まれた腕の強さに、あたしは戸惑って口を開けなかった。
そして、数学学習室の鍵を開けると、先生はあたしを部屋の中へと入れる。
そこでやっと離された腕に、少しだけ安心を覚えていた時。
後ろでドアを閉めた音がした。
振り向くと、真剣な目であたしを捕らえる先生の姿があって……戸惑いながら身体を竦めた。
「……なんで会ったんだよ」
その言葉に、頬の腫れを思い出してそれを手で隠した。
笑って誤魔化そうとして……でも、目に映った先生の怒ったような真剣な表情がそれを止める。
途中まで笑いかけた表情を曇らせて、口をキュッと結んだ。
「昨日……会いたいって電話があったから、それで……」
「……電話がきて、まだあいつがおまえを好きかもしれないとでも思った?」
「……違うっ……」
呆れたようにため息をつきながら言った先生に、あたしは首を振る。