甘い魔法―先生とあたしの恋―


「!?」


騒ぐ生徒の中、先生があたしの腕を掴んでた。

強く引かれる腕に、あたしは先生に連れ出される形で、列から飛び出す。


「貧血起こしてるんで、保健室連れて行きます」


先生は、途中、他の先生にそう告げて……でも、足を緩める事なく進む。


先生に腕を掴まれたまま体育館を出て、中校舎の階段を3階まで上がる。


その間、先生は何も話さなくて……。

掴まれた腕の強さに、あたしは戸惑って口を開けなかった。


そして、数学学習室の鍵を開けると、先生はあたしを部屋の中へと入れる。

そこでやっと離された腕に、少しだけ安心を覚えていた時。

後ろでドアを閉めた音がした。


振り向くと、真剣な目であたしを捕らえる先生の姿があって……戸惑いながら身体を竦めた。


「……なんで会ったんだよ」


その言葉に、頬の腫れを思い出してそれを手で隠した。

笑って誤魔化そうとして……でも、目に映った先生の怒ったような真剣な表情がそれを止める。

途中まで笑いかけた表情を曇らせて、口をキュッと結んだ。


「昨日……会いたいって電話があったから、それで……」

「……電話がきて、まだあいつがおまえを好きかもしれないとでも思った?」

「……違うっ……」


呆れたようにため息をつきながら言った先生に、あたしは首を振る。





< 150 / 455 >

この作品をシェア

pagetop