甘い魔法―先生とあたしの恋―
その日の授業中は集中できなくて。
出来る訳がなくて。
「37Pの問1~問4までの証明問題、終わったら好きな事やってていいから。
……ただし、うるさくすんなよ。あと、ケータイも絶対やめろよな」
少し時間のかかる証明問題を生徒に出して、窓側の壁に身体を預けた。
……教師として最低だな、俺。
教頭なんかにバレたら、またイヤミったらしくグチグチ言われんだろうな……。
バレたら……、まずい、よな。
こんな授業内容も……市川との事も。
……つぅか、市川は俺をどう想ってんだろ。
俺にキスされて、なんで文句も何も言わなかった?
今の高校生にとって、キスぐらい別に大した事じゃねぇとか?
……ならいいけど。
でも、違うよな。
そんな訳ねぇよな……。
市川は、そんなタイプじゃない。
……でも、じゃあなんでだ?
なんで俺の腕ん中で大人しくしてた?
なんで……
俺のキスを受け入れた?
なんで―――……
「矢野セン、最近指輪の彼女とどう?」
問題を終えた生徒が話し掛けてきて、自分の指にはめられている指輪に視線を落とす。
シルバーの指輪が、太陽に照らされてキラキラ光っていた。
……まるで、存在をアピールするように。