甘い魔法―先生とあたしの恋―

週2の授業



気まずくったって、毎日寮で顔を合わせるし、授業だってある。

色々考えたけど……気にしてない振りをするのが一番だと思った。


あの時……

『好きじゃなきゃキスなんかしない』

そう言った時、伝わってしまったかもしれない気持ちを隠す意味があるのかは、よく分からないけど……。


でも、先生に気まずいと思われるのは嫌だから。

あたしといる時間を嫌だと思われたくないから。

だから、何もなかった振りをする事に決めた。


……でも、先生の目は見られなかった。


先生と視線を交わすと、きっと思い出しちゃうから。


キスの事を……

抱き締められた腕の強さを……

先生の香りを……

思い出しちゃうから―――……


先生を真っ直ぐには、見られない。



何もなかったように接するって決めたのに。

やっぱり完全にそうするのは無理で。


自分がつくづく恋愛に対して不器用だって事を実感した。


好きだって感じた途端

自分の気持ちに気付いた途端

ろくに話もできなくなる。


拒絶されたのに、まだ嫌われる事が怖くて……なかなか話し掛けられない。


隣の部屋で物音を立てる先生に1人でドキドキして、廊下に出ると少しだけ香る先生の香りに胸が締め付けられる。


……重症。



『痛み止め』

いつか先生にもらった飴を思い出して、また小さく胸が痛んだ。






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