甘い魔法―先生とあたしの恋―
『困ってる生徒を放っとく訳にはいかねぇし』
俺が言えたのは、それだけだった。
教師としてなら、きっと高得点がもらえる回答だろうし、アレでよかった。
……そう思う。
けど……。
何を言うにも、生徒って言葉がついてくる。
話し掛けるのにも
優しくするのにも
助けるのにも
大切にするのにも……。
市川にどんな事をするにも……、
『生徒』
その言葉がないと許されなくて。
『教師』
そんな立場からじゃないと、許されない。
当たり前の現実に、小さく息を吐いた後顔を上げる。
目の前で行われる試合は、1対1の勝負になっていて、もう決着が着きそうだった。