甘い魔法―先生とあたしの恋―
1..出会い
きれい好きな隣人
【実姫SIDE】
「え……ここ?」
あたしの目の前にたたずむのは、見るからにボロいアパート……じゃなくて、「寮」だった。
4月5日。
天気は快晴で、高く登った太陽があたしを優しく包み込む。
家の事情で今日から寮生活をスタートすることになったのは納得してたけど……。
こんなボロいなんて聞いてないんですけど。
っていうか、本当に寮? コレ。
狭すぎじゃない!?
明らかに数人住めば満室に見える建物を目の前に、
あたしはこれが何かの間違いだと思いたくて一歩引いて見る。
……だけど、どう考えても学校の敷地内にある建物はこのボロボロの収容人数、数人だと思われる建物だけで。
「……ありえない」
ため息混じりになげきながら、寮らしき建物に足を踏み入れた。
1階にこじんまりとした食堂らしき部屋があって、その隣に「管理人室」と書かれた部屋があった。
歩くだけでミシミシと音を立てる廊下を睨みながら、管理人室のドアをノックする。
……返事なし。
「あのー……すみません。入りますけど……?」
あたしが恐る恐る管理人室のドアを開けた時、急に後ろから威勢のいい声が聞こえた。
「あれ!? ああ、市川さん??」
慌てて振り返ると、そこには小柄なおばさんが笑顔を浮かべて立っていた。
……なんか可愛い感じの人だな。憎めない感じ。