甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……っ」


先生の真剣な目に捕えられて……あたしは小さく身体を竦ませる。

先生はじっとあたしを見つめて、怖いくらい甘い声を出した。


「俺がおまえに優しくしたりとか、こうやって助けたりとか……それは、教師としてやってた訳じゃない」

「でもっ……」

「同情なんかじゃねぇよ」


覗きこまれたせいで元から近かった距離が、先生によって一気に縮められた。

そして―――……。


先生の唇が、あたしの唇に重なった。


「……―――」


一度だけした事のある、先生とのキス。

あたしの視界が全部先生で覆われて、頭の中も、あたし全部が先生の事だけでいっぱいになる。


……な、に?

突然の出来事に、動けずにいるあたしから、先生が唇を離して……。

少しだけ目を合わせた後、あたしを抱き寄せた。


え……、なに……?



戸惑いしか浮かばない頭に呆然としていると、先生がふっと笑みを零す。

耳元で動く空気に、小さく身体を竦ませた。


「……おまえさ、目くらい閉じろよ。前も開けっ放しだったし」

「……っ、そんなの、だってっ……」


先生に指摘されて、慌てていい訳を探す。

でもそれよりも優先された疑問が、口をつく。


「……なん、で……キスしたの……?」


途切れ途切れになったのは、緊張と、以前の事が頭を過ぎったから。


前にも同じ質問をした事があった。

その時の先生の答えは……

『おまえが寂しそうだったから』

そんな義理の優しさだった。


だから、また同じ答えを言われるのかもしれないって思うと……。

それを聞く事が少しだけためらわれた。






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