甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……わかんねぇの?」


ドキドキと、心臓が嫌な緊張を弾き出す。

キスした答えよりも、その答えの先に待つ怖さの方が勝って、思わず先生を止めようとした時―――……。

先生の柔らかい声が、あたしの耳に届いた。


「好きだからに決まってんだろ?」

「……―――― 」

「好きじゃなきゃ……キスなんかしない。

俺、そんなにいい加減な男じゃねぇし」


抱き締められながら耳元で聞かされる先生の言葉。

信じられない状況に、信じられるハズのない言葉―――……。


ビックリしすぎて混乱しながらも、先生の胸を押して身体を離した。

だって……、

だって、こんなの―――……、


「市川?」

「先生……言ってる事おかしいよ。

だって、こないだは生徒以上の気持ちなんかないって言った……。

それにキスだって、そういう意味じゃないって言ってたじゃんっ……」

「ああ、言ったな」


ふっと困り顔で笑う先生の答えに、あたしは尚も戸惑ったまま言葉を続ける。


「そう言ったのになんで……?

……あたしだよ? 誰かと間違えたりしてない……?」


浮かんできた疑問をそのまま口にすると、先生は呆れたように笑ってあたしを見た。

優しく見つめてくる瞳が、今日はいつも以上に胸をドキドキさせる。


「そんなの分かってるけど。つぅか、なに? 誰かって誰だよ」

「分かんないけど……、だって……」

「……確かに、前はそう言った。

だけど、それは……お互いのためにもそんな関係にならない方がいいと思ったからで、俺の本当の気持ちじゃない」

「……」






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