甘い魔法―先生とあたしの恋―
「何固まってんだよ。昨日の事、夢だとでも思った?」
「……ち、違っ」
「夢じゃねぇよ。
その証拠として、俺のTシャツは市川の涙と鼻水で、もう着られない状態に……って、そんな顔すんなよ。冗談だろ」
「先生がそんな意地悪言うからじゃん……」
どんな顔だか知らないけど、今、あたしの顔は絶対に真っ赤になってる。
じっと、恨めしそうに先生を見上げていると、先生はあたしの頭をポンと撫でて、通り過ぎた。
「そんな顔してて襲われても知らねぇぞ」
「……誰に?」
「……俺に?」
「っ!!」
言葉を失ったあたしに、先生が楽しそうに笑いながら、食堂に続く階段を下りる。
その足音を、あたしは固まったまま聞いていた。
おでこに残されたキスが
先生の言葉が
昨日の事が本当だって主張する。
先生が食堂に下りた後、あたしは自分のおでこに触って顔を赤くした。
微かに残る先生の香りが、心拍数を下げようとしない。