甘い魔法―先生とあたしの恋―
そして。
『ご褒美。俺の使ってたやつだけど』
『……クッション? 罠?』
『なんでだよ。これ、いくらキレイに拭いたって、もうボロいし結構トゲとかもあるから直接顔つけたりしたら危ねぇし。
刺さったりしたらまずいだろ』
『……』
そんな矢野の優しさに戸惑いながらも、素直に受け取ったクッションはクローゼット専用にした。
矢野の香水やらシャンプーやらの混ざった香りのするクッションは……部屋に置いておくには抵抗があって。
まぁ……ボロいのはアレだけど、なんとか住めるかな。
服もクローゼットの下の段にかろうじで入ったし。
ご飯も……用意してくれるらしいし。
この学校には普通科の他に体育科があって、体育科には専用の宿舎がある。
遠方から部の特待生として入学してくる生徒が多い事は、普通科のあたしでも知っているし、その人達が寮に住んでるのも知ってる。
その寮の調理のおばさんが、あたしの分も作ってくれるって聞いた時には、なんで? って正直不思議だったけど。
矢野の顔を見て、その理由が分かった気がした。
……きっとそそのかされたんだろうな、あの甘いマスクに。
おばさん受けしそうだし。
『いいわよ~、1食くらい変わんないんだから作ってあげるからっ』
なんて、矢野の食事をついでに作る事になって。
で、そこにあたしが入ってきて。
矢野の食事は作るのに、生徒のあたしには作らないっていうのはおかしいからついでに、みたいな……いや、よく知らないけど。
PIPI、PIPI……。
くだらない推理に頭を働かせていた時、ケータイがメール受信を知らせた。