甘い魔法―先生とあたしの恋―


どう考えても、この状況とあたしの反応を楽しんでいるようにしか見えない先生を、悔しくなりながらも見上げる。


目が合うと、先生は表情を緩めて……その微笑みに、再び視線を逸らしながら口を開く。


「……先生、ずるい」

「市川が意地張るからだろ? ……市川見てると素直にさせたくなるんだよな。

好きだとか、普段は言わないような事言わせてやりたくなる」

「……っ」

「俺だけが聞けるような言葉……言わせたくなる。

市川……どうして欲しいか言ってみ?」


甘い言葉で挑発しながらも、どこまでも余裕を見せる先生を……少し膨れたまま見上げる。


意外、って訳でもなかったけど。

意地悪な先生が無性に悔しくて……。


そんな先生を見てるだけで、振り切れそうな心拍数も、溢れ出て止まらない『好き』の気持ちも……

あたしを苦しく締め付ける。


睨むように先生を見上げると、尚も余裕のある笑みを浮かべる先生の胸ぐらを掴んで引き寄せた。

そして。


……―――あたしから、唇を合わせた。



数秒間触れていた唇を離すと、先生の驚いた顔があって。

少しだけドキドキしながらも、満足して笑う。


「あんまり意地悪するからだよ」


あたしの言葉に先生は笑みを零して……そして、Yシャツを握っていたあたしの手を掴んで、そのままあたしを引き寄せた。



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