甘い魔法―先生とあたしの恋―
三者面談
「来週から三者面談が始まるから。
プリントにある日程に都合がつかない人は、早めに言ってくるように」
朝のHRで担任が配ったプリントに、顔をしかめる。
10日 15時30分~ 市川
そう書かれた文字を見つめる。
仕事が忙しいお父さんは、去年は来なかった。
一応話はしたけど……『無理だな』なんて一言で終わった気がする。
今年だってきっと……。
「実姫、おじさん来るの?」
HRが終わると、諒子が後ろから背中をつついてきた。
身体半分だけ振り向いて、首を傾げる。
「んー……多分……っていうか、絶対来ないと思う」
「だけど、去年も来なくて怒られてたじゃん。
大人しかった去年の担任でさえ、怒ったんだよ?
島Tなんかすごい事になるんじゃない? 下手したら家庭訪問だって」
「んー……」
今年あたし達の担任になったのは、学年主任も務める英語教諭、38歳。
体育の教官を想像させるようながっちりとした身体付きで、流暢(りゅうちょう)な英語を話す。
島田って名前と、「teacher」の頭文字を取って合わせたあだ名。
……先生とどこか似てるあだ名なのに、生徒の人気は雲泥の差だと思う。
生徒に嫌われる理由は、自分に甘く人に厳しい性格が大きな原因。
「島T絶対ねちっこーく怒るよー。あー、やだやだ」
「んー……」
島田の怒る様子を頭の中で思い浮かべながら、プリントに視線を落したままもう一度ため息を落とした。