甘い魔法―先生とあたしの恋―


7月2日。

何度考え直してみても、曜日も日も合っていて、その事が余計にあたしの頭を困惑させた。


茶色い封筒に書かれている文字は、『実姫 8月分』。

その字は、間違いなくお父さんの字。


なんで……?

男の人にしては几帳面に見える文字を目の前に、首を傾げた。


毎月月末に用意されているハズの生活費。

6月は30日に7月分を取りにきた。

それはたった3日前の出来事で……それなのに。


既に用意されている8月分の生活費に、頭に浮かぶのはハテナマークばっかりだった。

3日前にあたしが生活費を持っていったのは、お父さんだって知ってるハズなのに。

どう考えても、もう次のお金が必要になるなんてありえないのに……。


なのに、なんで?



「……っていうか、こんなとこに置いといたら危ないし」


答えを探し出せない頭にそんな事を呟きながら、封筒を鞄の中に入れた。

そして、封筒のあった位置にプリントを置く。


そのまま踵を返して……不意にお金の事が頭を過ぎって、簡単なメモだけ残した。


『三者面談のプリント置きに寄りました。

もし出来るようなら都合つけてください。

生活費、まだ早いけど物騒だし持っていきます。


実姫』



よそよそしい文面に呆れながらも、そのメモをプリントの隣に置いてリビングを出た。



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