甘い魔法―先生とあたしの恋―


和馬が頷いたのを見て、あたしは「へー……」と力の抜けた言葉を漏らしながら視線を静かに落とす。


「振ったらって……断るの? 吉岡さん」

「ああ」


和馬の迷いのない返事に、少しだけ胸が痛む。


中学の頃から、ずっと和馬だけを好きだった吉岡さんを知っていたから。

あたしに突っかかってくるのも、和馬を想う気持ちの強さの裏返しで……。

迷惑だし面倒だって思う事も多かったけど、吉岡さんのまっすぐな気持ちはいつも感じてた。


和馬を誰にも渡したくないっていう、吉岡さんの強い気持ちを。



「……そっか」

「とりあえず食えば? 冷めたらまずいだろ」


ふぅっとため息をついて気分を落ち込ませていると、和馬が笑顔を作りながら食事を促した。

だけど……正直、あんまり食べる気分でもなくて。

それでも、和馬の言葉に頷いて、オムライスにスプーンを入れた。


「実姫、毎日矢野センと一緒に飯食べてんの?」


和馬の口から出た名前に、少しだけ動揺する。

でもそれに気付かれないように平然を装って、スプーンを口に運んだ。


「うーん……朝は結構一緒になるけど、夜はあんまり。

……なんで?」


笑顔を作って和馬に向けると、和馬はゆっくりと目を逸らして頬杖をつく。


「別に。……気になっただけ」

「……そう?」


和馬の様子がおかしい事には気付いていたけど、吉岡さんの事があるだけに深くは聞けなくて。

黙ってしまった和馬に、あたしも何も言わずにオムライスを口に運ぶ。



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