甘い魔法―先生とあたしの恋―
「つぅか、おまえら真剣に考えすぎなんだよ。
若いのに辛気くせぇ顔してんじゃねぇよ。もっと気楽に考えろ。
田宮のした事は許されねぇけど、田宮も本当はそれなりにつらい思いしてたってだけだろ?
これから先は田宮の頑張り次第だし、おまえらには関係ない」
「まぁ……確かにそうだけど」
「だから、おまえらが反省して暗くなる必要なんかねぇだろ。
清水が市川を思ってこの事を話した事くらい、市川だって分かってるだろうし。
市川だって、田宮が、正しい道選んだだけだって言ってんだから、振り返らないでそれ進めばいいんじゃねぇの?
いつまでもくよくよしてんなよ」
「……」
先生の言葉に、和馬が少し笑みを零しながらも頷く。
そんな様子を見て、先生も小さく微笑んだ。
「もっと楽しい事でも考えろよ。
遊びまわれるのなんか学生のうちだけなんだから……って、市川は何笑ってんだよ」
先生が苦笑いを浮かべながら、顔を隠して笑っていたあたしに視線を移す。
その声に顔を上げるけど……止まらない笑いのせいか、目に涙が溜まっていた。
「だって……先生が先生みたい。なんか大人ぶってる」
「大人で教師なんだから当たり前だろ。それの何がおかしいんだよ」
「おかしいよ、なんか変」
「……大体、おまえも別れた男の事なんかいつまでも考えてんじゃねぇよ」