甘い魔法―先生とあたしの恋―


「嘘つくな」

「嘘じゃないよ。

先生が何も話さないから話しかけにくいなぁって思ってただけで……先生?」


先生の表情はいつもの余裕を含んだものではなくて。

見た事のないような顔に、あたしは不思議になって先生を呼ぶ。


頬から口までを覆うように頬杖をついている先生の表情は、あたしからは覗きにくい。

だけどいつもと違う雰囲気は、目元の表情だけでも感じ取る事ができた。

……なんだか不機嫌そうな表情。


先生が機嫌を損ねた理由が分からなくて、あたしは顔をしかめる。


「……田宮の事聞いて、何かしら思った事があるだろ?

同情しただとか、他にも色々……。

……また、ヨリ戻したいとか思ってんじゃねぇの?」


あたしとは視線を合わせないままポツリポツリと話す先生に、表情を歪める。

さっきまでの自信に満ちた言葉や声とは正反対に、今の先生は不安げに、不貞腐れたように目を伏せていて……。


「……そんな事考えないよ。だって先生がさっきもう考えるなって言ったんじゃん」

「俺が言わなきゃ考えてたって事だろ?」

「それは……」


まるで揚げ足を取るような先生の態度に、あたしはますます表情を歪ませる。


冷めかけたオムライスが、2人の前で熱をなくしていく。



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