甘い魔法―先生とあたしの恋―
「……おまえ絶対評価下げてやる」
「違うってば。これは、思い出し笑いで、別に先生の事で笑ってるわけじゃ……」
「いや、絶対俺の事だし。……どうせ、小さい男とでも思ってんだろ。イメージ壊したなら悪いけど、別に謝んねぇから。
俺、独占欲とか絶対強いし。
おまえの口から田宮の名前が出るだけで、気に入らねぇくらいに強いし」
『謝んねぇから』
その言葉が、なんだか別れないからって言ってるみたいに聞こえて。
あたしの顔を余計ににやけさせる。
そんなあたしに、先生は不貞腐れた視線を送った後、思い出したように口を開いた。
「つぅか実家ってこないだ帰ったばっかりだったよな?」
「あ、うん。……三者面談のプリント置きに。どうせ来ないんだけど、一応……」
「ああ、そっか。
俺もそのうち担任持ったらやるんだろうなー……今から面倒くせー……」
教師としてあるまじき発言をする先生に呆れ笑いを零しながら、不意に思い出された事を口にする。
「あ、でもね、もう来月の生活費が置いてあったんだよ。
無用心だよね。お父さんその辺はしっかりしてるハズなんだけど……変なの」
「へぇ……アレだろ? 月末に取りに行くやつ」
先生は、意外とあたしが何気なく言った事まで覚えてくれていて、その記憶力には結構驚かされる。
生活費の事だって、だいぶ前に何かのついでに言ったような事なのに。
生活だとか言葉の中に、先生って頭いいのかもって思うような事が時たま垣間見える。