甘い魔法―先生とあたしの恋―
「うん。……っていうか、先生よく覚えてるね」
「俺昔から記憶力いいんだよな。
教師以外に向いてる仕事あったかもな。今からでもいけっかな」
ははっと笑いながら先生が言った言葉に、なんだか寂しくなってしまって……あたしは曖昧な笑みを返した。
『教師』と『生徒』
その関係は、先生とあたしを遠ざけるばかりだと思ってた。
その関係のせいで、先生との間にある壁は高くて厚くて……。
それはどんなに頑張ったって壊せないし、絶対になくならないから、そんな関係に心の底から嫌になった時もあった。
けど……その関係じゃなければ、出逢えなかった。
どこかで少しでも違っていれば……今、こうして一緒に笑ったりしていられなかった。
あたしと先生の、今までがどこか一ヶ所でも違っていたら。
そんな細い細い先生との繋がりが、なんだか急に不安になってしまって……怖くなった。
今は当たり前にある先生との時間。
だけどそれが何をきっかけで壊れるかは……、
何も分からないまま壊れていった自分の家族関係が浮かび上がってきて、
そんな漠然とした不安に拍車が掛かった時―――……。