甘い魔法―先生とあたしの恋―


「でも残念だけど朝は時間がないから、帰ってきてからじっくり……」

「……先生こそ素直になった方がいいよ。昨日やきもち妬きましたって」

「……妬いてねぇよ」

「じゃああたしも寂しくないし」

「じゃあ、ってなんだよ。おかしいだろ。なんで俺が認めねぇと素直にならないみたいな事になってんだよ」


笑いながら言った俺に、市川も笑顔を見せて。

穏やかな柔らかい空気が食堂を包む。

素直じゃない言葉。

だけど、気持ちを隠せない態度。


可愛げのない、だけど俺にとっては可愛すぎる強がりに、緩んだ口許がなかなか戻らない。




 ※※※




あー……結構距離あるな。


出張先からの帰り道。

駅から寮までの距離は2キロほど。

ケチらないでタクシーでも拾えばよかったと、少しだけ後悔しながら月明かりの照らす道を歩く。


いつもは通らない住宅街は、夕飯時なのに割と静かだった。

目立って聞こえてくるのは、電車の走る音くらい。

そんな中、胸ポケットでケータイが震えた。




from.市川実姫
sub.
―――――――――――
さっき中村さんが来て
先生がいなかったから
残念がって帰っていった
よ。

隣のクラスの女子も
先生の授業が自習で
文句言ってたし。

モテモテだね。

―――――――――――


市川のメールに、俺は小さく笑みを零す。


球技大会の翌日に交換した番号と、メアド。

でも、毎日顔を合わせてるせいで、これが市川からもらう初めてのメールだった。


メールの内容に、市川の膨れてる顔が浮かんできて……自然と緩んでいく口許を片手で隠す。




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