甘い魔法―先生とあたしの恋―


 ※※※



「あー……やべー……」


寮までの帰り道、俺を後悔の念がひたすら襲っていた。


『生徒のプライベートにはくれぐれも必要以上に関わらないように』

頭に浮かぶのは……うるさい教頭の声と、俺を怪訝そうに見る顔。


絶対関わりすぎだし。

担任でもねぇのに家まで上がり込んじゃったし。

殴った事に対する説教までしちゃったし。

申し訳ないとか、頭まで下げられちゃったし……。


「……絶対やべぇ」


……バレたら。


大体、親に育てられた記憶もない俺が、何言ってんだろ。


経験もした事のない俺の言葉なんて……きっと、たいした説得力もないに決まってる。


あんな理想論、市川の親父さんが出来た人間じゃなきゃ、怒鳴られてたとこだし。

『口突っ込むな』なんて言われて、追い出されて当然だし。



大きなため息を逃がしながら、俯かせていた顔を上げて空を見上げる。


たくさんの星が飾ってる夜空を見つめながら、目を細めた。









< 262 / 455 >

この作品をシェア

pagetop