甘い魔法―先生とあたしの恋―
「話の流れで……和馬と付き合ってる事になった」
「……清水? なんでだよ」
「だって、みんなに聞かれて困ってる時に丁度和馬が来て……。
流れで和馬が彼氏じゃないかって事になったら、和馬も乗ってくれて。
後から事情を説明したら、協力してくれるって言うし。だから」
「……」
「でも、みんな全然怪しまなかったよ。……お似合いとすら言われて微妙だったけど。
悪ノリした男子に、キスしろとか言われて大変だったんだからね?
全部先生のせいなんだから」
玄関で先生を責めていたあたしは、そこまで言ってから先生に背中を向けて階段を上る。
みんなの質問攻めのせいで、あたしもさっき帰って来たばかりだった。
持ったままのカバンをブラブラさせながら、ギシギシと音を立てる階段を上っていると、後ろから先生が追うように上ってきた。
「ちょっと待て。……で、しなかったんだろ?」
「……なにを?」
「キスに決まってんだろっ」
少しだけ余裕をなくしたように聞こえる先生の声。
そんな声に、あたしは背中を向けたまま笑みを零す。
嬉しさが込み上げてきて、すぐに頷きたくなるけど……。
「……さぁ。だって加納がしつこく言うから……」
「加納って……あー……、この間コロッケパンの夢見て腹鳴らしてた奴か。って、市川、待てって」
部屋に入ろうとしたあたしの腕を、先生が掴む。
突然後ろに引かれた形になったあたしは、一歩後ろによろけて……そんなあたしの両肩を先生が支える。
そして、強引に向かい合うようにさせられた。