甘い魔法―先生とあたしの恋―
「なに……?」
『……元気にやってるか?』
「……―――、」
自宅からそう離れていない所に住んでるのに……。
今までずっとそれ以上の距離を感じていた。
家じゃなくて、お父さんに。
こんな風に話す事なんて、本当に少なかったから。
あたしを心配してくれる言葉に、喉の奥が苦しくなったのを我慢しながら声を絞り出す。
「元気だよ。……お父さんは?」
『ああ、元気だよ。……仕事は相変わらず忙しいんだけどな』
お父さんの声が、耳を通して重く優しく響く。
『じゃあ、学校でな』
そう言って切れた電話。
だけど、切れた後もあたしはケータイをじっと見つめていた。
久しぶりに聞くお父さんの声を、なかなか慣れない耳が対処しきれない。
かけられた優しい言葉を……、頭がなかなか受け入れられない。
一度手をあげられて以来、お父さんはあたしを避けるているように見えたから、こんな風に話せた事は、かなり驚くような出来事で……。
勝手に浮かんでくる嬉しい気持ちに戸惑って……でも、じわじわと嬉しさが気持ちを支配していった。
「……」
だけど、なんでいきなり来る気になったのか。
あたしはその理由に頭を悩ませて首を傾げる。