甘い魔法―先生とあたしの恋―
なに……、それ―――……っ
教頭の言葉が、頭の中に留まって、なんとも言えない怒りが込み上げる。
震えるような怒りの感情が湧き上がってきて、手を力いっぱい握り締めてた。
先生ほど好かれてる教師なんて……、他にいないじゃない。
先生の授業をちゃんと受けるのは、みんなが先生の事好きだからだよ……っ
教師として、好きだから……。
先生は……ちゃんと勉強教えてくれてる。
必要な事は、全部教えてくれてる―――……っ。
『施設』だから……だから、何?
そんな事を平気で口にする教頭の方が、教師としての資格なんかないように感じて……あたしは歯を食いしばった。
悔しくて悔しくて……、涙まで込み上げてくる。
どこにも逃がしようのない悔しさに、マーカーの入った箱をギュッと抱き締める。
あたしの力に形を変えられた箱の底が抜けて……
8色のマーカーが音を立てて床に散らばった。
派手な音ではなくても、静まり返った廊下にはよく響いてしまって、あたしは慌ててしゃがむ。
そして散らばったマーカーを拾っていると……
床に落としたあたしの視界に、濃い茶色の靴が、カツンと音を響かせながら飛び込んできた。