甘い魔法―先生とあたしの恋―
時々垣間見る先生の寂しそうな瞳。
それが、何に向けられているのか、あたしは知らない。
それが、どれほどつらいものなのか……あたしは、知らない。
「あたし……頼りないかもしれないけど、でも先生の味方だよ……?
何があっても、先生の見方だもん……。
つらい事隠して、そんな風に笑わないでよ……」
先生の事、何でも受け止めるから。
どんな事でも、ちゃんと受け止めるから。
だから、もっとちゃんとあたしに見せてよ……先生の本当の気持ち。
教えてよ、先生のつらさ。
痛いなら、我慢して無理に笑わないで……。
あたしの前でまで、教師ぶらないでよ。
もっと……
もっとちゃんと―――……
「……いてぇよ」
先生が小さくため息をついて笑う。
そして、片手を後ろ手に床についたまま、もう片方の手をあたしの頭に乗せた。
優しく撫でる先生に、あたしは尖らせた口を開く。
「……教頭に頭なんか下げて、いい子ぶっちゃって」
「いいんだよ。別に。俺は気にしてないから」
「……嘘。先生はすぐそうやって……」
「つぅか、鼻水つけんなよ? クリーニング代バカになんねぇんだから」
「……」
誤魔化されたように感じて黙ると、先生が突然ぐいっとあたしの身体を離した。
そして、覗き込むようにしてあたしを見る。
「意外と泣き虫だな、おまえは」
「……」
「あー……泣いたまま不貞腐れると変な顔だな」
ふっと笑う先生に、あたしはむっとして先生の胸を拳で叩いた。