甘い魔法―先生とあたしの恋―

「清水……もっと、自分の欲を大事にしろよ」

「……どういう意味だよ？」

「……周りの事ばっかじゃなくて、自分の気持ち最優先にしたっていいんじゃねぇ？　って事。

市川の事はともかく……俺にまで気使う事ない。

言いたい事があるなら……」

「ない。……あったとしても、自分が胸張れるような正しい事してねぇのに、言える訳ない。

矢野センは、何も悪くない。

……らしくない事した俺を、注意してくれただけだろ」


俺の言葉を遮って、真っ直ぐに視線を向けていう清水に、呆れて笑みを零す。


「頑固だな」

「実姫にもよく言われる。……でも、やっぱり気持ち悪いのは苦手だから。

白と黒に分けて、白い道を選びたい」

「……清水、教師になるか？　それか警察とか。向いてるんじゃねぇ？」

「教師は嫌だ」


ははっと笑みを浮かべた清水に、少しためらいながらも口を開いた。


「……清水」

「なに？」

「俺に聞いた事……、市川にも聞くつもりか？」


ためらったのは、これを聞く事によって、清水に何か感づかれるかもしれないから。


清水の中にある疑いが、俺の言葉によって真実味を帯びてしまうかもしれないから。


それでも、口に出したのは――――……

市川を不安にさせたくなかったから。


俺の問いに、清水は少しだけ驚いた表情を浮かべて首を振った。