甘い魔法―先生とあたしの恋―

告白



木曜日の先生の授業の時、先生の眼鏡の話題になった。


「矢野セン、目、悪いの?」


生徒のそんな質問に、先生は黒板に数式を書きながら答える。


「そこそこな。だから仕事ん時だけ眼鏡。気持ちも切り替えられるし」

「へー、そうなんだ」


納得する生徒の中で、あたしは静かに表情を緩ませる。

だって、先生の素顔を知ってるのはあたしだけみたいで嬉しくなったから。


話しかけられれば誰とでも気軽に話す先生を独占できてる気がして、思わず頬が緩む。


そんな事を思いながら先生を眺めていると、不意に目が合いそうになって、慌てて顔を背けた。


学校では、なるべく目を合わせない。

必要な事以外は話さない。

先生の姿を目で追わない。


先生との関係を守るために、あたしが実行してる事。

この関係が、ひどく危ういものだって事は、あたしだってよく分かってるから。

だから、学校では……


……そう思ってたのに。


あたしは歪めた口許から、短いため息を漏らす。

原因は……、先週の自分の行動。




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