甘い魔法―先生とあたしの恋―
「っていうか独占欲強いよねー。自分でつけといて牽制(けんせい)するなんてさ」
「うん……意外だよね。なんかそんな風には見えないのに」
頷きながら言うと、諒子はパックジュースのストローを咥えながら小さく首を傾げる。
「そう? でも……アレじゃん。
実姫彼、親に置いていかれてるんでしょ?
あたしもお父さんいなかったし、お母さんもほとんど家にはいなかったから……実姫彼の気持ち、少し分かるよ。
大切な人ができたら、離したくなくなる気持ち。
目を離したらいなくなっちゃいそうで怖くて……自分だけに縛り付けときたくなる気持ち」
「……」
見つめる先で、諒子の伏せられた目の色が一瞬曇る。
でも、あたしの視線に気付いた諒子は、すぐに明るく笑った。
「まぁ、大変だね! やきもち妬きの彼氏を持つとさ」
「うん……」
諒子の笑顔に何も返せなくなったあたしは、同じように笑顔を作って頷く。
せっかく明るく笑ってくれた諒子に、また話題を戻しても悪い気がして……何も聞けなかった。
「そういえば……新しくできたお兄ちゃんとはうまくいってる?
2コ上だっけ? 大学生だったよね?」
諒子の曇らせた表情が気になりながらも、話題を変えると、諒子が一瞬戸惑った表情をあたしに向けた。
そんな様子に首を傾げると、諒子が慌てて口を開く。
「ああ、うんっ。大丈夫っ」
「そう?」
「うんっ」
やけに力んで答える諒子を不思議に思っていると、5時間目開始のチャイムが教室に響いた。