甘い魔法―先生とあたしの恋―


「げっ……次、島Tじゃん」


表情を思いっきり歪ませながら教科書を取り出す諒子に、あたしは苦笑いを浮かべた。



『大切な人ができたら、離したくなくなる気持ち。

目を離したらいなくなっちゃいそうで怖くて……自分だけに縛り付けときたくなる気持ち』


英語の授業中、諒子の言葉が頭の中をぐるぐる回っていた。



『言っただろ? 俺、独占欲強いんだって』


そう言った時の先生の顔は……真剣で、少し寂しそうだった。


あの時、ドキドキしたのと同時に、小さな疑問を抱いた。

いつもは軽い雰囲気を作る先生が、やけに真剣だったから。


なんとなく……先生の本当の気持ちの部分が、少しだけ見えた気がした。

いつもは出さない、曇らせた表情。

切なそうに伏せられた瞳。


先生が、いつも笑顔で隠してる部分が……、見えた気がした。



『いなくなっちゃいそうで怖くて……』


先生は……、本当にそんな事を思ってるの?

だからあんな顔してたの?


……大丈夫だよ。

あたしが離れる訳ないじゃん。

こんなに好きなんだから……離れる訳、ないじゃん。


先生が不安になるような事なんてないのに……。


先生の見せた表情が、あたしの胸を締め付ける。

寂しそうな瞳に、ぎゅっと胸が掴まれたように苦しくなった。


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