甘い魔法―先生とあたしの恋―
気まずい沈黙を和馬の言葉が破ったのは、寮の食堂に入った時だった。
「俺、実姫が好きだ」
寮に入るなりいきなり言った和馬に、あたしは言葉を失った。
あまりに唐突すぎる言葉。
冗談かとも思ったけど、まっすぐに見つめてくる和馬に、そんな可能性は薄れていく。
「……本気で言ってる?」
「本気で言ってる」
「……そっか」
予想もしてなかった和馬の告白に、あたしはゆっくりと顔を俯かせる。
和馬にどんな顔を見せればいいのか分からなくて……。
大体、好きっていつから? とか、あたしのどこが? とか……そんな疑問ばかりが頭に浮かぶ。
何か答えなくちゃと思うのに、先生の事は言えないって考えがそれを止める。
だけど、こんな時まで嘘で誤魔化すのは嫌で……ただひたすらに黙って考えていた時、和馬が再び口を開いた。
「ごめん、困らせて。……分かってるんだ。
実姫が誰を好きかって事くらい……でも、どうしてももう限界でさ」
和馬の言葉に顔を上げたあたしに、和馬は困り顔で笑う。
そして、驚いた表情を浮かべたままでいるあたしに……微笑んだ。
「前言ってた、実姫の好きな奴……矢野センだろ?」
「……―――っ」
一瞬、身体が竦んで……
そのまま時間が止まったように感じた。
ドクン、と大きく鳴った心臓すら、そのまま止まったように感じた。