甘い魔法―先生とあたしの恋―
和馬の後ろ姿が、バタンというドアの閉まる音と同時に見えなくなる。
その音を聞いてから、あたしは俯いた。
すぐに他の子、なんて和馬の強がりだって分かってた。
全部の態度が、無理してる事なんて、分かってた。
無理して、必死に笑ってくれてるって……、分かってるのに……。
それでも、あたしの頭は、あの一言に縛られていた。
『実姫見てればそれくらい分かる。
実姫分かりやすいしな』
うそ……。
うそだよ、そんなの……
だって、あたし気を付けてるのに。
先生を見ないように意識してるし、会話だってしないようにしてる。
なるべく近寄らないようにしてるのに……。
……なのに、なんで?
なんで……?
あたし、そんなに態度に出してる……?
先生が好きだって、バレるくらい態度に出してるの……?
うそだ……。
心臓が、ドクドクと嫌なリズムを刻み出す。
視線を落とした先で、古ぼけた床板が揺らめく。