甘い魔法―先生とあたしの恋―
噂
「それは、和馬くんが実姫を好きだからだよ。
好きだから、だから気付いただけ。ずっと見てたから。
大体、実姫の彼氏は和馬くんって事になってるんだからバレないって」
月曜日の朝のHRの後、凹むあたしに諒子がリップクリーム片手に言う。
「っていうか……そっか、告白されたんだっけ……。
なんか突然色々な事言われてよく分かんない……」
ふぅ……っと重いため息をついて昨日の事を考える。
あまりのショックに、和馬の告白にきちんとした返事を出せなかった事を後悔して……和馬が残した笑顔に、胸が痛む。
いつも通り接するつもりだけど……だけど、それで和馬は本当にいいのかな……。
そんな事を考えて、でも、答えの出ない疑問に顔を上げると、諒子がリップを塗った唇を鏡で確認しているところだった。
「……随分気にしてるね。荒れちゃったの?」
「え、ああ、うん。
昨日お兄ちゃんに荒れてるって言われて……ムカついたから、もうぷるっぷるにしてやろうかと思って」
口を尖らせながら言う諒子に思わず笑みを零すと、諒子が続ける。
「だってムカつくんだよ?
普段は何も言わないでクール気取ってるくせに、たまに口開いたかと思えば、『寝ぐせがついてる』とか、『スカートが短い』とか……。
なんかそんな注意ばっかりしてきて……本当にやだっ」
「ふぅん。大変だね」