甘い魔法―先生とあたしの恋―
to.和馬
sub.
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先週はごめんね。
彼氏の振り、もう大丈夫
だから。
自分勝手でごめんなさい。
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お昼休みに入るとすぐに、そんなメールを和馬に送った。
本当なら直接言わなくちゃだって分かりながらも……先週の告白が頭をかすめて、それを止めた。
逃げている自分に思わず重いため息をついた時、勢いよく教室のドアが開いた。
ドアを開けて生徒の視線を一斉に集めたのは、女子生徒で……みんなの視線を集めたまま興奮した様子で口を開く。
「先週、矢野センが女子生徒と抱き合ってたらしいよっ!!」
「……―――っ」
その一言に、クラス中が騒ぎ出す。
「えぇえっ! なに、どういう事?!」
「生徒って、誰?!」
「っていうか、超ショックなんだけどー……」
質問や嘆きを一斉に浴びた女子生徒が、みんなのざわめきが少し落ち着いたところで、目をキラキラさせながら話し出す。
「水曜日か木曜日らしいんだけど、放課後の夕方くらいに、中校舎の階段脇で抱き合ってたんだって!
誰かは分からんないけど、肩より少し長いくらいの茶髪で、ストレートだって!」
頭に浮かぶのは……、
先週の木曜日、教頭に注意を受けていた先生に抱きついた事―――……
ドクドク、心臓が速いリズムで動き出す。
不規則にも感じる鼓動に、どうしていいのか分からなくて俯いた時、机の上に置いてあるあたしの手を諒子が握った。
ゆっくりと顔を上げると、諒子はきゅっと結んだ口で微笑んでいて……。
あたしはそんな諒子に不安げに表情を歪める事しか出来なかった。