甘い魔法―先生とあたしの恋―


「うちのクラスで髪下ろしてて肩下までの茶髪っていうと……実姫くらいだね。

長い子って、みんなパーマとかかけちゃってるし……」


女子生徒の1人が言うと、クラス全員の視線があたしに集まる。

その視線に身体を竦ませると、次々に質問が飛んできた。


「えっ、実姫なの?!」

「マジ?!」

「ってか、清水くんはどうしたの?!」


飛んでくる言葉にどう答えればいいのか分からなくて、必死に言葉を探す。

けど……


『和馬と付き合ってる』

そんな嘘は、もう言えるハズがなかった。


和馬の気持ちを知りながら、都合のいい時だけ利用するなんて……できるハズ、ない。


だからといって、別れたなんて事を言えば、それに対する興味本位の疑問が飛んでくるのは分かっていて……。


どうしたらいいのか分からない状態に表情を歪めた時、席の上にある、廊下側の窓が開いた。


「お、噂をすれば」


窓から顔を出した和馬に、教室中からひやかしが飛ぶ。

クラス中から向けられるキラキラした視線に、和馬は不思議そうに首を傾げた。


「は? なに、俺の噂話?」

「清水じゃなくて矢野センの噂話。

先週、中校舎で女子生徒と抱き合ってたらしいんだけど、その生徒が市川に似てたらしいって話」




< 302 / 455 >

この作品をシェア

pagetop