甘い魔法―先生とあたしの恋―
「うちのクラスで髪下ろしてて肩下までの茶髪っていうと……実姫くらいだね。
長い子って、みんなパーマとかかけちゃってるし……」
女子生徒の1人が言うと、クラス全員の視線があたしに集まる。
その視線に身体を竦ませると、次々に質問が飛んできた。
「えっ、実姫なの?!」
「マジ?!」
「ってか、清水くんはどうしたの?!」
飛んでくる言葉にどう答えればいいのか分からなくて、必死に言葉を探す。
けど……
『和馬と付き合ってる』
そんな嘘は、もう言えるハズがなかった。
和馬の気持ちを知りながら、都合のいい時だけ利用するなんて……できるハズ、ない。
だからといって、別れたなんて事を言えば、それに対する興味本位の疑問が飛んでくるのは分かっていて……。
どうしたらいいのか分からない状態に表情を歪めた時、席の上にある、廊下側の窓が開いた。
「お、噂をすれば」
窓から顔を出した和馬に、教室中からひやかしが飛ぶ。
クラス中から向けられるキラキラした視線に、和馬は不思議そうに首を傾げた。
「は? なに、俺の噂話?」
「清水じゃなくて矢野センの噂話。
先週、中校舎で女子生徒と抱き合ってたらしいんだけど、その生徒が市川に似てたらしいって話」