甘い魔法―先生とあたしの恋―
そんな事を考えているあたしに気付いてか、先生は優しく微笑んで言葉を続ける。
「大丈夫だよ。おまえが考えてるような事は言われてねぇし。
おまえは何も心配する事ないから」
「本当に……? 本当に言われてない……?」
先生が傷付くような事。
先生の過去を、差別するような事……
言葉に含ませた部分は、先生に伝わったようで、先生は微笑んだまま頷く。
「大丈夫。……ありがとな」
「……よかった」
「……市川」
「……なに?」
呼ばれて顔を上げると、そこには先生の少し真剣な表情があって、あたしは小さく緊張する。
先生はじっと見つめて……そして、真剣な表情のまま口を開く。
「もし、この先俺が何か言われてても、市川が気にする必要なんかないからな?
自分のせいだ、なんて思う必要は、少しもない。
……それだけ、覚えとけ」
「……でも、」
「おまえは何も考えずに学生生活を楽しんでればいんだよ。
……あと、安心して俺の事好きでいれば、それでいいんじゃねぇ?」
「……」
「……せめてつっこめよ。自惚れてるみたいで恥ずかしいだろ」
先生が目の前で笑う。
だけど―――……
あたしは返事も出来なければ、笑顔を返す事も出来なかった。