甘い魔法―先生とあたしの恋―
「どうしたの?」
「あー……うん」
言いにくい事なのか、和馬は少し黙ってしまって……でも、真面目な表情をあたしに向けた。
「矢野センって……施設で育ったって本当?」
和馬の口から出た言葉に、一瞬戸惑ったけど、相手が和馬だったから素直に頷いた。
「……うん」
「そっか……。いや、先週、矢野セン呼び出されてたじゃん?
で、盗み聞きしてた奴がいてさ、部活ん時ちょっと話題になってたから」
その言葉に、足が止まる。
それに気付いた和馬は、あたしよりも少し進んだところで止まって振り返った。
「なんで……? 教頭、また施設の事先生に言ったの……?」
信じられない思いで聞くあたしに、和馬は気まずそうに俯いて首の後ろあたりを掻く。
なかなか答えない和馬の答えが気になって、問い詰めるように和馬を呼んだ。
「和馬」
「……俺も聞いた話だし、本当かどうかよく分からないけど……。
なんか教頭が、……
―――……」
登校する生徒達の声が、騒がしく響く通学路。
そんな中で、あたしは唇を噛みしめた。
身体中の力が、抜け落ちたような脱力感があたしを襲っていた。