甘い魔法―先生とあたしの恋―
視線の先には、いつになく真剣な先生がいて……、あたしは、耐え切れずに俯いた。
……全部、
全部、夢ならいいのに。
教頭と先生のやりとりも
吉岡さんとの事も
あたしが感じている気持ちも
言おうとしている言葉も……
全部
夢ならいいのに。
『寝坊か? 俺の夢でも見てたんだろ』とか。
起きたら先生がからかってきて。
あたしもそれに憎まれ口を叩く。
……―――でも。
騒がしい心臓が
張り詰めた空気が
熱い瞼が……
これが現実だって、あたしに突きつける。
今が、別れが、現実だって。
信じようとしない往生際の悪いあたしを、咎める。
本当は、何に代えたって離したくなんかないのに。
誰よりも傍にいたいのに。
一番近くで笑い合って、触れ合ってたいのに―――……
「それに……、学校にバレたら面倒だもん。
退学とか……あたし、嫌だし……。
先生だって、困るでしょ?」
搾り出すように出した声が、喉を傷つけて出て行くようだった。
ずっと言えなかった言葉は、身体中を巡って、あたしの中にいくつものキズを残したみたいに感じた。
呑み込んだ感情が、そのキズから流れ込んできて。
切り裂かれるような痛みが身体中に走っていた。
それでも、必死に先生を見つめる。