甘い魔法―先生とあたしの恋―


「……あたし、和馬と付き合いたい。

だから……、ごめんなさい……。

全部、あたしのわがままだから……。ごめんなさい……」


頭を下げた途端に、溜まっていた涙が溢れ出して床へと落ちた。

一度封を切ってしまった涙は、留まる事を知らないように溢れ続ける。


次々に床へと落ちていく涙が、

蛍光灯に照らされてキラキラと光って見えた。


この涙に、先生が気付かない事を願いながら、静かに涙を溢れさせることしか出来なかった。


まるで、あたしの気持ちを代弁しているように溢れ続ける涙が、

それを先生に伝えようとポタポタと瞳から零れる。


そんな涙に、ぎゅっと目を閉じた時。

近付いてきた先生に、突然腕を掴まれた。



掴んだ腕ごと引き寄せる先生に、あたしは一瞬身体を竦ませて……でも、涙に気付かれないように顔は上げなかった。


「そんな嘘……、俺が信じると思ってんの?」

「……っ」


ぐっと力を込めて掴まれた腕が、痛い。


触れた場所から流れ込んでくる先生の気持ちが……

痛くて痛くて、仕方がなかった。


「市川……本当の事、言えよ」


その声に、やっと顔を上げると……鋭い視線を向ける先生がいて。

……あたしの胸を罪悪感が襲った。


先生の瞳は、怖いっていうよりも、傷付いているように見えたから。


ズキズキと痛み出した胸が、あたしの声を震わせる。


「嘘じゃないよ。……怖くなったの。

……バレるのが」






< 345 / 455 >

この作品をシェア

pagetop