甘い魔法―先生とあたしの恋―


『怖くなったの……。

先生が、教師を辞めなくちゃならなくなるのが……』


『隣の部屋からいなくなっちゃうのが……』


『どこか遠くに行っちゃうのが……』


『もう、見る事もできなくなるのが……』


『先生が、いなくなるのが―――……』




学校から

寮から

あたしの視界から……


先生を失う事だけが怖くて……

怖くて怖くて、仕方ない―――……





「……市川、もしバレても、おまえの事は……」

「別れたいって言ってるじゃんっ……」


振り絞って出した声が、泣いてた。


本当に望んでるのは、違う事なのに……

まったく逆の事なのに……


それを押し殺すように、願っている言葉とは反対の言葉を口にする。


「もう、……疲れた。

普通の恋がしたい……」



先生……、胸が、痛いよ。



「普通の、彼氏が欲しい……」



先生……、抱き締めてよ……

ぎゅって……いっぱい抱き締めて。



「だから……、もう、別れたい――――……」



先生以外、要らない。

先生しか、欲しくない。





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