甘い魔法―先生とあたしの恋―
「もー……あたしも実姫も5組。
3年はクラス替えないし……これで卒業まで一緒だね」
「あ、ほんと? よかった」
まだ髪を気にしながら言う諒子に、笑顔を向けた。
今までと場所の変わったげた箱。
だけど、諒子と出席番号が前後のせいで、何も新鮮さを感じなかった。
……別にげた箱にそんなもの求めてもいないけど。
靴さえ収納してくれれば文句なんかある訳ないし。
「実姫さぁ……啓太くんとまだ別れないの?」
上履きを履きながら聞いていた諒子に、あたしは苦笑いを浮かべて……その答えを誤魔化す。
だけど、誤魔化せない事実をあたしの頬に見つけた諒子が、勢いよく肩を掴んだ。
「ちょっとっ!!」
「え……なに?」
急に肩を掴まれて、びっくりして諒子を見て……。
諒子の表情に再び驚いてしまった。
真剣な顔をして睨むように見てくる諒子に、あたしは慌てて頬を隠す。
「……また殴られたの?」
もうほとんど気付かない程度の腫れ、それと小さな傷に気付かれて、諒子から目を逸らす。
素直に頷く事は、ためらわれて、何て答えればいいのか分からなかった。
諒子の真剣な目が、心配してくれる気持が……胸を締め付ける。
何も言えない自分に目を伏せると、諒子はそんなあたしを見て悲しそうな表情を浮かべた。