甘い魔法―先生とあたしの恋―
もちろん、嬉しい気持ちでいっぱいだった。
嬉しくて……
ずっと、張り詰めていた糸が切れたみたいに、身体中の力が抜けそうなほど安心した。
素直に白状した事なんてなかったけど、ずっとお父さんからの愛情を望んでいたのは確かだったから。
ずっと……、諦めきれずに待っていたのは、確かだったから―――……
だから、お父さんのくれた言葉が、嬉しくて嬉しくて……
夢みたいに、嬉しくて……
……―――でも。
「……ありがと。でも……寮にいるよ。
ご飯も出るし、慣れると楽だから大丈夫」
「そうか……。分かったよ。だけど、何かあったらすぐに連絡だけはよこすようにな」
「うん」
お父さんは、あたしが頷くのを確認してから、穏やかな頬笑みを残して、待たせていた車に乗り込んだ。
徐々に遠くなっていく車のエンジン音を聞きながら、ゆっくりと視線を寮に向ける。
初めて見た時は、古すぎる佇まいガッカリした。
いちいちうるさい階段とか床は、今でも頭にくる時がある。
水量の少ないシャワーもイライラする。
クローゼットだって抜けちゃってるし、壁なんて信じられないくらい薄い欠陥住宅ならぬ、欠陥アパート。
2万の家賃だって……
色々と踏まえれば、結構妥当とすら思えるし。