甘い魔法―先生とあたしの恋―
少し先にあるゴミ箱に視線を移す。
そこに、今日もあったモノに、俺は眉を潜めた。
頭痛薬の錠剤の抜け殻。
市川の頭を痛ませている感情は……
――ガチャ
市川が出て行ってしばらくした時、寮のドアが開いた。
その音に振り返った俺の目に映ったのは……、気まずそうな表情をした清水だった。
「ちょっと……話があるんだけど」
あまり見たくない清水の顔に、ため息を落とす。
市川の入れたコーヒーの香りが、俺と清水を包み込んでいた。
「……なに?」
コーヒーを口に運びながら返事をする。
表情をしかめたままの清水は、椅子に座る様子はなく、食堂の入り口に立ったままだった。
「実姫の事なんだけど……ここちょっと、様子がおかしいんだけど」
「おかしいって……、そんな事言いに来たのかよ。
おまえ、あんなに俺の事ライバル視してたくせに、今さら俺に頼るなよ。
……彼氏ならなんとかしてやれ」
多分市川の事だと予想していた頭は、そこまで動揺は示さなかった。
新聞を見ながら言った俺に、清水は表情を強張らせる。
そして。