甘い魔法―先生とあたしの恋―
田宮との事を知ってるから。
市川が、普通の恋愛を望んでる事が、分かるから。
少しでも多く笑顔になれる恋愛を、して欲しいと思うから―――……
市川の強がりに気付きながらも、気付かない振りをした。
市川の涙に、手をきつく握り締めた。
常に不安が追いかけてくる、俺との恋愛。
それが市川の幸せだとは……
俺は思えない。
そう思い込みたいのに……、思えない―――……
『バレたら……』
俺だって、考えなかった訳じゃない。
心配する市川を笑いながらも、いつも不安に思ってた。
市川がまずい事になる事も……
俺がまずい事になる事も……
簡単に予想できた。
……―――だけど。
どうしても……
どうしても、自分から離してやる事ができなかった。
市川に、別れを切り出してやる事が、
できなかった。
俺の言葉に涙を流す市川を、抱き締めないでいるなんて……
どう考えたって、無理だと思ったから。